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昨日、、、ですが、のらくろの文庫本第3巻と4巻、とともに借りてきていま読んでいるのが、これ───”夏目&呉の復活!大人まんが”。
 夏目&呉の両ハカセが推奨広告する、いろいろなプロ漫画家たちの作品の、集合体(本)で、その編集方針といいますのが、一言で、これ───”大人まんが”。
 それというのは、1960年前後が黄金期で、はやくも(?)70年前後には退潮期をむかえ、、、掲載紙としては、主に”漫画読本”(現在は休刊)や、”週刊漫画サンデー”(これは、その後、劇画へと路線転換)をもち、もはやいまとなれば、絶滅あるいはそのちょい手前くらいにあるマンガ分野、、、ということで、内容といえば、大体がナンセンスばくはつで、再三再読に耐えるのが特徴で、あせって読んではいけない、読み捨ててはいけない、ストーリーマンガでも、子供マンガでも、アニメ絵ポルノでもない、洒落た大人の、、、深みのあるマンガ、、、みたいなところらしいです。そんな大人まんがの巨人たちの作品が、両マンガハカセの手によって、これっ、というのものが抜き出され、1冊のかたまりになってるわけでして、、、わたしもこれまで、多少は読んだことありますし、ぽつんぽつんと、その作者たるかたがたの、名前くらいはどこかで耳にしていましたが、、、ってなところで、わたくしめと、その、大人まんがとの邂逅のもようを、少々。
 第1部”大人よ笑え!”にては、五人のThe・刺客。
 東海林さだお超プロ『新漫画文学全集』。これ、おもしろいです! で、おもしろくて、つまらない。怖そうな奥さんのもと、物静かそうな旦那さんが、にわでなんか、ボートつくってる、すごい形相で、にらみつけるようにして、まあ、当然、奥さんは縁側から聞くわけです、「ボートなんか作ってどうするのか、聞いてんじゃんかよ。コノバカ」旦那さんは振り返ろうともせずに、「ボートでネ、沖へ出てみようと思っているのだよ」「沖って海のかい?」「そうなのだよ」で、出来たぁとか旦那さんが言ってると、奥さんがつかつかと庭の方へ出てきて、ボートの先をサンダルでぐちぐち踏んでつぶす、すると、旦那さん、なにもいわずにまた、そこにかがんで、金槌をふるいだす、「どうするつもりだい」「直しているのだよ」、、、一夜明けて(と思う)、とうとう、準備整ったみたいで、旦那さん、ボート、肩にかついでる、「じゃ、できたから、行くからな」「行くってあんた、どこへ行くんだよ」「この船に乗って、沖へ出るのだよ」「沖へ出て、どうするんだよ」「どんどんどんどん行ってしまうのだヨ」「だからどんどん沖へ出てどこへ行くんだヨ」「だからどんどん沖へ出て、またどんどんどんどん行ってしまうのだよ」「そんなこといって、会社はどうするんだよ、会社は?」「お世話になりましたといってくれ」「それじゃおまえさん、本気なんだね」、、、とここで、一転、これまで鉄の面持ちだった鬼嫁の表情が、もろくもくずれて、「じゃアな」とボートをかついで背を向ける旦那さんにむかって、すがるよう、「待っとくれよ、おまえさん。ちょっと待っとくれよ」と、なかばパニックにおちいって、騒ぎ出すんですが、、、みたいな内容でして、余韻もたっぷりあるし、いってみれば、超おもしろいです。じゃあ、おもしろくて、つまらないといったわけの方は、古臭くて、文学的、、、だからってことになるでしょうか。哲学的、ともいえるなぁ、でも、たしかにおもしろいです。このマンガは、だれも否定できないんじゃないでしょうか、、、ごく、おもしろいから。単純に、この”大人なおもしろさ”にひっかからなくて、素通りしてしまうことはあるでしょうが。
 二人目の刺客。加藤芳郎『千匹の忍者』。なにより、発想のちからがつよいマンガやなぁと思いました(日焼けしたじぶんの皮をぬいで、それを、分身の術に使用するとか)。でも、それが勝っている、っていうだけで、あんまり、ひっかかりませんでした。
 第三。谷岡ヤスジ『アギャキャーマン』。う~ん、これはおもしろいッ。めちゃめちゃおもしろかった。クチビル・いわ男みたいなんがタバコくわえて漫然とテレビ見てるところへ、ボロい窓をがらがらっとあけて、なんの脈絡もなく、龍がはいってくる、、、んで、クチビルいわ男の前にそれとなく腰を落ち着けて、そっから、ふたりがなにやら言葉をかわしだすんですが、、、ただただ、二者のやりとりがおもしろい、まあ、天才天才と、音にきこえし谷岡ヤスジですけど、、やっぱりおもしろいですね。でも、バンバンその作品を読みたいっ! と思っても、このひとの単行本は、そのほとんどが手に入らない、、、(う~ん、欲しいなぁ、、、まんだらけでもひさびさにいってみようかなぁ、って感じについなります)。
 黒鉄ヒロシ『喪服おばさん』。西洋モンが死神、それが日本なら、”喪服おばさん”、ということ、で、いのちの引取り人、お迎え役。怪談で有名なお岩さんのもとへ、この喪服おばさんが、、、。で、その、お岩さんの性格がいかにも太平楽で、すっとぼけてる。ひとり、ふたりめの、東海林・加藤両プロが、落ち着いた、枯れた味わいをもつ、ソザツな線による絵柄で、三人めの谷岡プロが、また単純ソザツで、投げやりな線によるものだとすれば、この黒鉄プロは、なんか、おしつけがましくない、品やつつしみがある感じでの、達人の筆さばき、みたいな気配をただよわせている絵柄でした。たいへん、オクユキがありそう。話自体は、今回は、単純なものでした。
 第1部さいご、岩本久則(イワモト キューソク)『プカリトピア』。
 呉ハカセの解説によると”頭脳派”、、、なるほど、たしかに。でも、読んでて、ふつうに、おかしかったです。べつに頭脳うんぬんということなく。な~~~~んにもない、大海らしきところに、ぷかぷか浮かんだ、ぎりぎり寸法の丸太にすわる、スフィンクスみたいな頭した顔なが男がありまして、、、かつ、その、ひろがる海の真ん中に、ただぽっかりとひとつ、公園にあるような、石づくりの長い土台もつ蛇口が出てるんですよ<笑> で、ばばばとそこでは水が勢いよく出てる、この水が大海をかたちづくってる??? なぁんてつい想像しちゃいますけどそれはさておきっ、男が顔を横にして、その出続けてる水にくちをさし出すと、ピタッ、と放出が止まる、ん? となって、今度は手洗いするよう両手を出す、───と、また止まる、、、その状況(設定・前提)での、おかしな様子が描かれていくわけですね、古典的な感じもしつつ、おもしろかったです。ほかのも読んでみたい。
 第1部さらっと読んでみて、シューカクおおあり、なんじゃないでしょうか。それぞれの作者に、おおいに、魅せられました。そんななか、ひときわ輝いて見えたのが、谷岡プロ。作者の存在が輝いてるわ。つぎは久則プロ、、、かなぁ。玄人肌を感じさせる、黒鉄プロももうちょっと見てみたいなぁ、と思いました。東海林プロは、前述のとおり、なんか、おもしろくって、つまらんから、、、あるしゅその面白さの形が、予想がつく(旧来的)、とでもいいますか。今回読んだのは、読後感といい、あきらかに、傑作だと思いますが。でも、もちろん、ほかの作品も、キョーミありますけどね。んで、加藤プロ、、、う~ん、まあ、ほんのちょっと読んだだけで、わからないですけど、べつにおもしろくなかったわけじゃなく、、、とりあえず、こんな感じなのかな、と。
 いうところの、現代弱勢力”大人まんが”たち、第1部・大人よ笑え! の、レポートでございました。